1 研究当初の生徒の状況と課題
仲間内だけと思ってやり取りした誹謗中傷のメッセージや善意のつもりで情報を拡散してしまう行為など、ネット利用にかかる最低限のルールが守られていない状況が見られた。自らの行動が招く事態を予見できない未熟さ、ネットを利用するうえでの判断力の乏しさへの対応が求められる。そして、何よりも自らの行動が他者の人権を侵害する恐れについて、それを認識できるような人権意識の高揚が図られるべきである。
2 研究テーマ
「相互に人権を尊重し合う社会の実現に向けて、自ら判断し行動できる生徒の育成をめざして」
3 ねらい
ネット上のいじめをはじめとするいじめ問題の未然防止または解決に向けて、生徒会が主体となる活動、家庭への適切な情報提供による啓発、人権意識を土台とした道徳教育の充実により、自らの行動が他者の人権に与える影響について、確実に認識できる人権意識の向上を図り、自他の人権を尊重できる生徒の育成をめざす。
4 具体的な取組
⑴ 研究の概要(様式1)
⑵ 各領域における取組
ア 教科における取組
・取り組みの概要(様式2)
・指導案
・ワークシート、生徒の感想
イ 道徳における取組
・取り組みの概要(様式2)
・指導案
・生徒の感想
ウ 特別活動における取組
・取り組みの概要(様式2)
・生徒の感想
エ 総合的な学習における取組
・取り組みの概要(様式2)
・指導案
・生徒の感想
5 成果と課題
⑴ 成果
現時点では、昨年度に起こったようなネット上のいじめは発生していない。学校評価アンケートにおいても、「情報機器の使い方について、家庭で約束が決められており、守っている」「いじめを受けたり、見たり、聞いたりすると、だれかに相談する」と答えた生徒と、「情報機器の使い方について、家庭で約束を決め、子どもに守らせている」「自分の子は人が困っていたら、進んで助けたり手伝ったりすることができる」と答えた保護者の割合が、昨年度と比べて僅かではあるが増加している。授業や学習会後の感想からも、「自分もストレスのはけ口に、傷つける内容を書いていた」「過去にいじめを見たときに、助けたかったけれど動けなかった」といった自分自身を率直に振り返る姿や、「自分が加害者になっていないか判断することが大切だ」「自分がこの話の『私』だったらこんな方法でやってみる」といった、学びをより自分事として捉える姿が見られた。これらのことから、今年度の取組は一定の成果を挙げていると分析している。
また、人権学習会では、「生徒会役員の司会の人が、私たちが言ったことにリアクションをとってくれたので、良い雰囲気になっていた」「生徒会役員の人のおかげで、スムーズに話が進んだ」といった感想が多く見られた。3年生が温かい雰囲気作りをするための工夫や努力をしてくれていることに気づき、1・2年生は来年、再来年には自分たちがそういう雰囲気の学校を作っていくのだという思いを強くしたようだ。
⑵ 課題
「家庭の約束を守らないと、使わせてもらえなくなるから守っている」「ネットに陰口を書くと、後で面倒くさいことになりそうだから書かない」といった消極的な理由からそうしている生徒は少なくないと思われるが、現状でそれを教職員・保護者が把握することは難しい。「守らなければならない」「書いてはいけない」という思考から、「守りたい」「書きたくない」という思考へとシフトしていくための取組が今後は必要である。また、道徳の授業においても、生徒アンケートの「道徳が好きだ・楽しい」という問いに対しては、おおむね肯定的な回答であったが、「聞かれていることが難しくて、わからない」「考えて、書いて、伝え合ってというパターンになっている」「大切だとは思うが、楽しくはない」といった回答も散見された。「生徒自身の生き方と繋ぐ授業」をめざして、今後も研究を進めていきたい。